HTC J butterfly HTL21 (AQP8064) を手に入れたので、
今更ながらやっと Krait と Adreno 320 を試せるようになりました。

Krait は Qualcomm が開発した ARMv7A CPU の CPU core で
Scorpion の後継にあたります。
ARM でいえば Cortex-A15 の世代に相当し、Apple A6/A6X の CPU core も同様に
この世代に属します。

これら ARM, Qualcomm, Apple 3つの CPU は同じ ARMv7-A の命令
アーキテクチャでアプリケーションに互換性がありますが、
Intel と AMD のように設計や性能は異なります。

ARM            Qualcomm    Apple
---------------------------------------------------------
Cortex-A8/A9   Scorpion                    vfpv3   ~2012
Cortex-A15     Krait       Apple A6        vfpv4   2012~

この中で Krait が最も先に登場しており、日本でも 5月の HTC J 以降
Snapdragon S4 MSM8960/8260A/8660A 搭載機種が増えています。
むしろ LTE では Krait でないスマートフォンの方が少ないかもしれません。


Snapdragon S4 Pro APQ8064 のもう一つ新しい点は、GPU も世代交代していることです。
GPU Adreno 320 はハードウエア的には OpenGL ES 3.0 に対応しており、
こちらも他社に先駆けて手に入る状態となりました。

実際に調べてみると、OpenGL ES 3.0 の新しい圧縮テクスチャ形式である
ETC2 / EAC に対応していることがわかります。

TextureFormat 26
tc[00]=87f9  GL_3DC_X_AMD
tc[01]=87fa  GL_3DC_XY_AMD
tc[02]=8c92  GL_ATC_RGB_AMD
tc[03]=8c93  GL_ATC_RGBA_EXPLICIT_ALPHA_AMD
tc[04]=87ee  GL_ATC_RGBA_INTERPOLATED_ALPHA_AMD
tc[05]=8d64  GL_ETC1_RGB8_OES
tc[06]=8b90  GL_PALETTE4_RGB8_OES
tc[07]=8b91  GL_PALETTE4_RGBA8_OES
tc[08]=8b92  GL_PALETTE4_R5_G6_B5_OES
tc[09]=8b93  GL_PALETTE4_RGBA4_OES
tc[10]=8b94  GL_PALETTE4_RGB5_A1_OES
tc[11]=8b95  GL_PALETTE8_RGB8_OES
tc[12]=8b96  GL_PALETTE8_RGBA8_OES
tc[13]=8b97  GL_PALETTE8_R5_G6_B5_OES
tc[14]=8b98  GL_PALETTE8_RGBA4_OES
tc[15]=8b99  GL_PALETTE8_RGB5_A1_OES
tc[16]=9270  GL_COMPRESSED_R11_EAC
tc[17]=9271  GL_COMPRESSED_SIGNED_R11_EAC
tc[18]=9272  GL_COMPRESSED_RG11_EAC
tc[19]=9273  GL_COMPRESSED_SIGNED_RG11_EAC
tc[20]=9274  GL_COMPRESSED_RGB8_ETC2
tc[21]=9275  GL_COMPRESSED_SRGB8_ETC2
tc[22]=9276  GL_COMPRESSED_RGB8_PUNCHTHROUGH_ALPHA1_ETC2
tc[23]=9277  GL_COMPRESSED_SRGB8_PUNCHTHROUGH_ALPHA1_ETC2
tc[24]=9278  GL_COMPRESSED_RGBA8_ETC2_EAC
tc[25]=9279  GL_COMPRESSED_SRGB8_ALPHA8_ETC2_EAC

OpenGL ES 2.0 のままでも列挙されるので、すでに利用できる状態となっています。
ETC1 も同列に列挙されるのは OpenGL ES 2.0 API だからだと思われます。

また GPU Extension に GL_EXT_sRGB が増えています。
sRGB 対応もやはり OpenGL ES 3.0 の新機能です。

Extension の詳細は下記のページに追加しました。

OpenGL ES Extension (Mobile GPU)

GPU 比較はこちら

Mobile GPU の比較


いつものベンチマークはデータをとっている最中です。
使った感じは GPU が非常に速いです。
一番重いケースでも 30fps を余裕で超えており、とても Full HD (1920x1080)
でレンダリングしているとは思えません。

傾向としては Adreno 220 と同じでシェーダーの演算負荷に強く、同じ
Unified Shader ながら PowerVR のように面積が増えても極端に処理落ちしません。
演算精度によるペナルティが無いため、プログラマにとっては非常に扱いやすく
かつ演算精度が高いのでレンダリング結果も綺麗です。

ピクセルシェーダーの命令が少なく演算負荷が軽いケースでは PowerVR が
飛び抜けていますが、ピクセル(フラグメント)の演算量が多い場合はおそらく
A5X の PowerVR SGX543MP4 より速く、A6X の SGX554MP4 に近い数値が出るようです。
もちろん条件によるので万能ではありません。

CPU のデータも計測中ですが CPU core 単体では A6/A6X よりも遅いようです。
やはり A6/A6X は速いです。
その代わり core 数が A6/A6X の 2倍 (Quad core) なので、
総合的な能力では十分だと思います。


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